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進捗20%(2018.05.14更新)

劇団の新作公演はあらすじ以上の内容が上演前に知られることが少ないです。なぜなら台本が出来ていないから。他にも理由はあると思いますけど、主に台本が出来ていないせいだと思うんです。でもお客様は、あらすじよりもう少し詳しく、作品の内容を知っておきたい人が多いのではないでしょうか。決して安くはないチケット代を払うときに、内容をよく知らず、劇団への信用だけで劇場に訪れるというのも、それはそれで素敵な関係だとは思いますが、やはり台本が出来ていれば、もう少しご案内の方法もあると思うのです。そこで、台本の進捗率に合わせて、内容をご紹介していこうという企画です。長い前置きですみません。ただ、せっかくのコラボ企画なので、「それぞれの劇作家がお互いの作品を読んで、感想をしたため、それを紹介文とする」ことにしました。お互い、結末も知らないのに感想を書くという無茶をします。台本が出来ていれば、こんな無茶しなくてもよかったのにね! それでは早速、はりきって紹介していきましょう!

『ミナソコ』進捗20%感想文/書いた人・渡山博崇

斜田章大さんの書く戯曲は不穏な感じがすごい。冒頭から嫌な予感しかしない。冒頭ではミナソコというタイトルがどんなふうに効いてくるのかと考える前に、さっくりと提示される。ああ、だからミナソコなのね。なるほど、と。文字からだと「水底」とか「皆底」とかのダブルミーニングを考えてたんだけれど。「皆底」がみんな地の底に埋められるような皆殺しルートだったとしたら、嫌だな。怖すぎるだろ。それはエンディングまでわからないことだろうけど、さすがにそれはないか。
少し読み進めると、これがいわゆる「館モノ」だということがわかる。ミステリーの定番、王道といってもいい、あの「館モノ」だ。ついわくわくしてしまう。きっと古い因習があって、それに巻きこまれた主人公が血を血で洗うような惨劇に巻きこまれていくに違いない。いいぞ。まあ、そうであってほしいという願望に過ぎないけども。
しかし○○が○○を○うところから始まるんだけど、これって○○の○なのかな。ネタバレを気にして伏字だらけになってしまう。ネタバレといえば○○の役は元山さんが演じるのかなと思い聞いてみると「そうですよ」とあっさり教えてくれた。やっぱりね。話し方がそうだもの。元山さんのイメージで台詞が再生されたもの。むしろこの主人公は、誰が演じるのか、ちょっと予測がつかない。台詞の印象からだと、普通というか人畜無害な感じもするんだけど、ちょっと不穏な会話もあるし、え、そんなことする? というびっくり行為もするので、やはり一筋縄ではいかないキャラクターなんだろう。
現在のところ、まずは人物紹介といった風情で、不穏な気配と細やかな伏線を張り巡らせている。綾辻行人ばりの叙述トリックを仕込んでいるのか。演劇で叙述トリックって、どうやるんだ。それとも森博嗣のような唖然とするような仕掛けをしているのか。そもそもこれはミステリーなのかどうかもまだわからないのに、すっかり楽しみにしてしまっている。

アンデルセンの「人魚姫」をモチーフにしているようで、うちの『うつくしい生活』は「鼠と小鳥とソーセージ」というグリム童話をモチーフにしているので、親和性も高く、はからずもコラボ企画としてバランスが良い感じする。しかしタイトルに「書評」と付けてもらったものの、これ書評と言えるのだろうか。世の書評家のみなさんの文章をよく読んで、修行したほうがいいね。

「うつくしい生活」進捗20%感想文/書いた人・斜田章大

今回のコラボのキャッチコピーは「メルヘンVSメンヘラ」なのですが、そう私こそがメンヘラ担当の廃墟文藝部 斜田です、よろしくお願いいたします。
さて、メルヘン担当の「星の女子さん」の作品について、書評を書かせていただくわけですが、メルヘンを標榜しているだけあって、星の女子さんの話はいつも非常に童話的であり、今回の作品「うつくしい生活」では、グリム童話の「鼠と小鳥とソーセージ」をモチーフにしています。
ところで、童話とは、その名のとおり大人が子供に読み聞かせるための物語なのですが(ここは色んな解釈があって喧嘩になりそうですが……僕はもともとの定義はそういうものかなと思っています。)その性質上、時代によって内容が変わっていくものです。時代や場所によって、善悪の基準は変わるので、それに沿ってちょっとずつ変わっていく定めにある物語ということなのでしょう。そういった意味で、童話とは現代を映す鏡の一つの形なのかもしれませんね。
さて、ここで今回の作品「うつくしい生活」についてですが、現状は起承転結で言えば、承の頭から半ばくらいになるのでしょうか? 現段階で、これは現代と童話の距離感を描いた作品なのかと感じました。それは古い文化と、新しい文化との関係性とも言い換えられるかもしれません。舞台は、鼠と小鳥とソーセージの三人(単位はこれでいいのか……?)が暮らす家。そこに新しい文化が少しずつ入り込んでくる。童話的な物語は破綻し、その破綻を軌道修正するためにされる努力は、更なる破綻を招いていく。
タイトルにある美しい生活とは、童話的な生活の事なのか? それとも新しく入り込んでくる生活の事なのか? それはまだ分かりませんし、最後まで分からないのかもしれません。ただ、一度蔓延した文化は時に常軌を逸したスピードで生活を変える。そういうことなのだと思います。
なんだかネタバレを避けながら、書評を書き始めたら、ほとんど作品の内容に触れられないまま文字数が規定値近くまで来てしまいました。なんだか小難しいことを書きましたが、今回の作品もいつもの星の女子さんの作品のように、アハハと笑いながら見られる作品だということを保証します。不思議な世界でアハハと笑って、しかし終幕後に世界のことを考えさせる、そんないつもの女子さんの作品です。
最後に、ネタバレにならなさそうな場所で、今回の作品で琴線に触れた言葉を紹介して、この書評の幕としたいと思います。
「時間は元に戻らない」
「人生とはそういうものだ。しかし幸い君たちは人じゃない。」

まとめ

 

渡山 むつかしいね、これ。

斜田 むずかしいですね。途中までしかないのに、書評は無理があるんじゃないですか。

渡山 君が言い出したんだ。

斜田 そうだとしてもですよ。

渡山 (そうだとしても……?)

斜田 しかもこれ、続けるんですよね。

渡山 まあ、そうだね。

斜田 台本書いた方がいいんじゃないですか。

渡山 いやまあ、お互い刺激にはなるんじゃない?

斜田 なるほど。ユーザーフレンドリーな顔して、自分たちのためになることなんですね。

渡山 うん。

斜田 完全に理解しました。

渡山 次は進捗60%くらいになったらやろうか。

斜田 つまりいつまでも更新されなかったら、60%書けてないんだなってことですね。

渡山 そういうこと言わないの。

第二回交換書評につづく

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